其の十八 「リラックス−目標到達直前」

 みなさん、こんにちわ。古賀です。

オリンピックの会場のアテネの視察から本日帰って参りました。
来年のアテネ五輪まで、あと一年。早いですね、4年間は。

でも、その4年間も目の前の一つ一つの積み重ねです、本当、それにつきますね。
全てに真剣に取り組む事が大切です。

さて、今回は引き続き、「リラックス」についてです。それではどうぞ!

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 結局、現役生活が終わるまで「ロッキーのテーマ」は何百回、何千回も聴くことになった。
疲労が溜まっているとくなどトレーニングで「走りたくねえな」というときもある。

 「走りたくない」しかし「走らなきゃダメだ」でも「走りたくない」と自分で葛藤するときもあった。体が走りたくない状態なのだが、気持ち的には走らなきゃいけないことは分かっている。そんなときは、自分を奮い立たせる起爆剤のようなつもりで「ロッキーのテーマ」をトレーニングするときに聴いていた。

 不思議なことに、あの曲を聴くと自分のなかに眠っている神経が全部起き上がってくる感覚があった。細胞が活性化し、疲れていたはずなのに積極的に走りこんだりもした。

 つまり、体の疲労を心のエネルギーで取り去ってしまったのだ。

 講道学舎時代の私達は、練習を休んでゲームをやることや映画を見る事が気分転換、リラックス法だとは思ってはいなかった。

 「明日はサッカーだ!」「明日は映画だ」と単純に子供心に嬉しい気持ちでしかなかった。

 今になって振り返ったときに「あれがリラックスになっていたのだ」と感じる。吉村先生は生徒全体の緊張の度合いを考え、リラックスさせるタイミングを考えて休みを与えていたのだと思う。

 父もそうだったが、吉村先生も練習でも遊びでもやるときには徹底的に、真剣にやる人だった。リラックスするときは、遊びであっても徹底的に楽しんだ方が良い。

 遊んでいるのに「試合も近いのにいいのだろうか?」と考えてしまったら返って不安を生み逆効果になってしまうだろう。

 実を言えば、バルセロナオリンピックの直前にも、僅かだが気持ちが落ち込んだ瞬間があった。だが、この頃には、リラックス法を自分でも掴んでいた。

 テレビを見ていたら豊島園プールのCMがちょうど流れた。プールの滑り台がすごく面白そうに見えたのだ。

 「ちょっと行ってみるか」と柔道部の後輩を数人連れて行ってみたことがある。

 子供時代から柔道をやっている人にはわかってもらえると思うのだが、柔道選手は子供時代から泳ぐことを禁止される場合が多い。これは体を冷やすという意味ではなく、夏場にプールや海に行って背中を日焼けすると擦れて柔道衣が着られなくなるのだ。だから「プールに行くなよ!」と小学校時代から言われ続けているのだ。

 後輩達も子供時代から柔道をやっており、プールを禁止されていた。柔道選手にとってプールはある意味で、子供の頃から行ってみたいけど、行けない憧れの場所なのかもしれない。年齢的にはプールではしゃぐ年ではなかったが、徹底的に遊んだ。何度も滑り台で水のなかに突っ込んでいくと、もやもやした気分がスッキリとしてくるのが分かった。

 プールに来ていたお客の中には「あれ、柔道の古賀じゃない」と、はしゃぎまわる自分に気付いた人もいた。「でも、今ごろプールなんかで遊んでいるわけないよ」と。

 まさかオリンピック直前に大会主将でもあるスポーツ選手が遊んでいるわけがない、と思ったのだろうか。その数日後にはバルセロナに出発するのだが、あのとき自分のストレスを発散し、リラックスできたことが非常に重要だと思っている。


(終)

『精神力』(角川書店)より抜粋

(次回更新 7月31日)


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