其の二十二 「父親の話2」

 こんにちわ、古賀です。すっかり秋の気配ですね。
この季節は、稽古もやりやすいですし、また食べ物がおいしいんですよね!
現役時代は「肉・ビール」が好きだったのに、最近「刺身・焼酎」が好きになってきたのは、オヤジっぽいですかね・・・(笑)?

さて、みなさん、世界柔道見て頂けましたか??
私も女子チームのコーチ、TVの解説として参加したのですが、8年ぶりの地元開催、盛り上がりが違いますよね。選手達も力を出し切れた選手、そうではない選手、と様々だと思いますが、更に上を目指して、自分の技を磨いていって欲しいと思います。一つの事を追い求めていって見える事はたくさんあるかと思います。今後に期待したいと思います。

さて、今回の人生一直線も「父」についてです。

=======================================

 小学2年からは早朝のトレーニングにも父は付き合ってくれていた。

 当初は近所にゴルフ場があり、朝早い誰もいない間に芝の上を坂道ダッシュしたり、大きな池の周りをぐるぐるランニングしたり。今考えるとトレーニングするには完璧な環境だったと思う。その後、トレーニングの一環として近所にある千栗八幡宮の石段、150段を毎日7回前後往復するメニューが加わった。父はストップウォッチを持って兄弟のタイムをいつも計った。身体の軽い子ども時代でもキツいトレーニングだが、タイムを計ることで成長する喜びも感じ楽しんでいたと思う。

 今でもたまに帰って久しぶりに石段を走ると、非常にキツい。段の幅が狭くボコボコと不安定な昔ながらの石段だ。だが、この練習で柔道に必要な脚力と、バランス感覚が身についたように感じる。

 父は鉄骨関連の仕事をしていた関係で、庭に鉄柱を埋め込み基礎をコンクリートで固めチューブを巻いて打ち込みのトレーニングマシーンを作ってくれたりもした。

 「足の位置をもう少しこうしたほうがいいんじゃないか」
 「手の使い方をもっとこうしたほうがいいんじゃないか」

とアドバイスをしてくれた。今、考えると「こうしろ!」と強制的に言われたことは一度もなかった。あくまでも「こうがいいのでは?」と子どもと一緒に考え、行動する姿勢だったと思う。

 日曜日には試合があることが多かった。九州は小学生でも柔道大会が多い地域だ。道場内の対抗試合も頻繁にあった。そして、そのほとんどの試合に両親も一緒に付いていってくれたように記憶している。

 非常に協力に熱心だった父だが、子どもの頃から「練習をやらせる」という態度ではなかった。
 自分達で「強くなりたい」「勝ちたい」と頑張っている限りは、親として協力を惜しまないという姿勢だったように思う。
 そして、何事に関してもズルや嘘の嫌いな人だった。

 ある冬の日、いつもと同じように兄と一緒に車の後部座席に乗り道場に向かった。暖房利いた車内は心地よく、ふたりはいつしか眠っていた。道場に車が到着すると父が「着いたぞ」と声をかけてくる。私にはその声が聞こえたが、兄が目を覚まさない。その瞬間、自分の気持ちのなかで「俺もここで起きなきゃ今日は練習休みかな?」と思ってしまったのだ。
 もう一度、父が「おい、着いたぞ!」と呼ぶ。それでも兄が起きない。そのまま私も寝たふりをした。そうすると、しばらくしてエンジンがかかり車は動き出してしまった。

 「あっ、家に帰るんだ!」とその瞬間だけは嬉しかったことを覚えている。
 家にかえると父はいつものように晩酌しながら飯を食べ始めた。
 しかし、その雰囲気で父の気持ちがわかった。

 兄と別の部屋にいたのだが「どうする?」「ヤバイな」と兄弟なりに反省していると、気配を察した母が来て、
 「あんたたち、とりあえず腕立てと腹筋やりなさい!」
 うちの母は父と私たちの間に入り情報をお互いに伝えるような立場をよくとっていた。

 「ふたりで汗かくまでやんなさいよ!」

 ふたりで改めて柔道衣を着込み必死になって腕立て、腹筋をこなしていると、しばらくして母がやってきた。
 「お父さんが、あんたたちが一生懸命にまたこれからやるって言うんだったら、道場へ連れていくって。だからどうするかふたりでよく考えなさい」

 別に柔道を止めたくてそういうことをしたわけではなかった。子どもなら誰でもある、ほんのちょっとサボりたい、休みたいと思う軽い出来心だったのだ。

 すぐに兄と一緒に父の前で正座し、
 「また明日から道場へ連れてってください」
 と謝ると父は「わかった」と一言。

 また翌日からいつもと変わらない毎日になったのだが、そのときに子どもながらに自分できめたことは何事も徹底してやらなければいけないと感じていた。ズルをすることは嘘であり、自分に対するごまかしなのだと思った。

 父は普段から言葉で多くを言わない人だった。だが、その存在で、言葉で語らずとも態度で徹底して物事に取り組む、という姿勢を私たちに教えていたと思う。
 
 これは柔道に関してだけでなく、遊ぶときでも同じだった。

(つづく)

『精神力』(角川書店)より抜粋

(次回更新 10月15日)


「人生一直線」コラム一覧に戻る