其の二十三 「父親の話3」

 こんにちわ、古賀です。いよいよ寒くなってきましたね。みなさんはいかがお過ごしでしょうか?

私はと言うと、世界選手権も終わり、最近は全国各地に講演や柔道教室で行く事が多いです。目標を持つことの大切さ、それに向かう途中で何をすべきか、そしてその課程で何が得られるか、と言うお話をさせて頂くのですが、何事も真剣に、本気で取り組まなくては得られるもの、学べるものも半減してしまいます。やはり、何事も100%の力を出す事によって、自分の成長があるかと思います。

さて、今回もその何事にも真剣に取り組む事の大切さを教えてくれた父のお話をしたいと思います。

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 父が大人として子どもの遊びを見るのではなく、私たちと徹底的にこだわって遊んでくれたように思う。

夏には潮干狩りに家族でよく行った。多くの人は小さな熊手でチョコチョコと浅瀬の砂をほじくる程度だが、父は違った。自作の金属製の網カゴを担ぎ、ひとり深瀬に歩いていく。大きなスコップでカゴに砂をズザ〜とかき入れると浜まで戻ってきてエイヤッとそれを引き出し海水にくぐらせる。中には大量のハマグリやアサリ。一回潮干狩りに行くと普通の家族連れの十倍以上の収穫があった。

また、カブトムシやクワガタもよく獲りに行った。これもまた徹底していて深夜三時に起きて車を飛ばして山に入る。山のなかを懐中電灯を照らしながら歩き回り、ブナ、クヌギの木を見つけると父が幹をバーンと蹴る。バタバタバターッと音がして大量のカブトムシ、クワガタが落下してくる。兄弟ふたりで懐中電灯を持って虫カゴに入れるのだが、獲るというよりは詰めるといったほうがいいほど大量に獲れた。

五月から六月には、夜の十時頃に福岡県と佐賀県の間に流れる筑後川に行き天然ウナギをよく釣りに行った。高校時代に福岡で金鷲旗大会(300校以上が参加する高校柔道最大規模の大会)があると父は釣っておいたウナギを蒲焼にして差し入れたりもしてくれた。
 梅雨時になると、山奥の沢まで車を走らせサワガニを獲りにいった。これも毎回ポリバケツに一杯になるほど、とにかく徹底的に獲った。

必ずしも毎日が柔道漬けというわけではなく、その季節に合わせた遊び(考えてみれば全部が自然相手の遊びだったが)を実際父が楽しみながらやり、私たちも楽しんでやっていたように思う。

遊ぶことも真剣勝負だから柔道のほうも真剣でなければいけない、中途半端にはできないと子供心に自然と思うようになったのかもしれない。

不思議なことに小学校時代は、練習に対して辛さは全く感じなかった。自分のなかにも強くなりたい、という気持ちは強かった。だから石段トレーニングにしても強くなるための当たり前のことと受け止めていたのだと思う。だが、もしこれが親からの強制という内容だったら子供ながらに「嫌だ」と感じていただろう。

私にそれが無かったということは、私の強くなりたいという気持ちを父が言葉だけではなく、いろいろな行動や、時には自然と遊ぶことでリラックスを交えながら引き出してくれたのだと思う。うまく私の気持ちを乗せてくれていたのだ、と感じる。

(つづく)

『精神力』(角川書店)より抜粋

(次回更新 10月31日)


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