其の四十五 「谷亮子の強さの秘密(2)」

 こんにちわ。古賀です。いや〜、寒くなって来ましたね。古賀塾も今年は26日(日)の道場内の大会「古賀塾杯」をもって終わりです。思えば、この古賀塾杯も今回で第五回目(年に2回)になります。開塾した当時に比べれば、本当に飛躍的にみんな成長したと思います。日々の練習の成果を発揮し、更にたくましく成長した姿を見れると期待しています。

今回も前回に引続き、谷亮子の強さについて触れたいと思います。

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 以前、ミュンヘンで行われた世界柔道選手権の大会直前の練習で、谷選手は右膝内側側副じん帯損傷というケガを負った。だが、私は谷選手は絶対に勝つと信じていた。

 ケガをした当初こそ、不安げな表情をしていたが、周りの家族やスタッフに励まされ、直ぐに自分の気持ちを立て直しているのが分かった。彼女はピンチをチャンスに替える方法を既に会得している。そういう精神力を兼ね備えた選手なのだ。

 ケガだけでなく組み合わせた抽選でも谷選手は強敵が集まるブロックに入った。しかも、一回戦からのフル出場となった。『勝利の女神は、非情』とマスコミでは書いていたが、谷選手本人はこのことで逆に闘志が湧いてきたのではないかと思う。

 試合に際しても、実際に戦い始めてから、表情が変わっていったのがわかった。初戦、二回戦と戦ううちに自分の感覚が掴めていったのだろう。勝ち上がっていくたびに、自分のケガの状態を判断できていたのだと思う。

 三回戦で、今年二月のハンガリー国際で優勝しているダニエスカ・カリオン選手(キューバ)と顔を合わせた。彼女は二十一歳の新鋭で、世界選手権で谷選手のライバルとされたアマリリス・サボンに代わって出場してきた新鋭の選手だった。
谷選手に対して精神的に引いていたサボンよりも、立場的に失うものがないだけに怖い相手だと感じていたが、優勝勝ち。

 準決勝の時点では、恐らく既に足の感覚がなかったと思うが見事一本勝ち。
 決勝でも、北朝鮮のリ・キョンオク選手を終始果敢に攻め2−1の旗判定で優勝勝ち。
 ケガをして、「記録が大きくなればなるほど、大きな試練がやってくる。これを乗り越えたい」と試合前に話していた谷選手だが、見事カベを破り優勝した。前人未踏の世界選手権五連覇(現在は六連覇)を心から祝福したい。

 彼女ほどのレベルになれば自分の状況、ケガの状態も自分自身がわかっていただろう。どんな状態であれ勝つためにはどうすればいいか、どういう戦い方をすればいいか、どういう気持ちで取り組めばいいのか、という目的意識の持ち方、気持ちのパワーが圧倒的に他の選手とは違うのだ。

 この強い気持ちは、彼女自身が今まで作りあげてきたものだ。
ハードな練習に耐え、常に緊張感を持ちながら生活していく。そういう積み重ねがやはり精神力の強さを作り上げていったのだろう。

『精神力』(角川書店)より抜粋

(次回更新 1月17日)


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